QDT3月
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13QDT Vol.37/2012 March page0305はじめに ここ数年、わが国においてもインプラントオーバーデンチャー(以下、IOD)が話題として採り上げられることが多くなってきている。しかし、IODそのものは決して新しいものではない。その源流をたどれば、インプラントが無歯顎に利用されるようになった時点にまで遡ることも可能である。こうした中、話題にのぼる頻度が増した背景には、高齢者人口の増加、インプラント治療に対する要求の多様化、インプラント治療後の長期症例への対応の必要性などに加えて、社会の経済的な状況も存在する。 しかしながら、IODを長期に安定した治療オプションとして利用するためのメインテナンスを含めた必要条件が正しく理解されずに利用されている場合も増えているのではないかと懸念する。これまでの報告1において、とくに上顎の症例において当初計画した固定性上部構造が実現できなくなった場合の次善の策(いわゆるプランB)として用いられた場合の成功率・生存率が低いという問題がそれを物語る例といえる1。 そこで本稿では、近年になってIODが注目されるきっかけのひとつとなった、「下顎無歯顎患者に対する標準的な治療は2本のインプラントによるIODである」とした2002年の「McGillコンセンサス」を軸に、現在の補綴臨床におけるIODの位置づけを再考する端緒としたい。Part1:IODの歴史から考える1‐1.オーバーデンチャーの利点・欠点は? 本項ではまず、IODの話題に入る前に天然歯を支台としたオーバーデンチャーの利点について簡単に触れておきたい。少数歯残存症例においてオーバーデンチャーを利用する利点としては、支台歯周囲の顎骨の保全とそれにともなう顎堤吸収の抑制、および義歯の安定性の向上が挙げられる2。支台歯の状態によっては維持装置(アタッチメント)を介しての維持の向上も期待できる。この顎堤の保護には、義歯装着にともなう顎堤吸収という生物学的代償(生物学的コスト)を少なくできるという利点があると考えられる3(図1)。 一方で、義歯床が支台歯を被覆するために、唾液による自浄作用が期待できないことから根面う蝕や、歯周疾患に罹患する可能性が高くなることが挙げられる5,6。また、粘膜負担領域においては義歯床下の顎骨の吸収に対応する必要もあり、義歯装着後の定期的な経過観察(メインテナンス)は不可欠である。 これらの利点・欠点ならびに必要条件は、IODにおいても共通しているものが多い(図2)。天然歯・インプラント、および義歯における顎骨の吸収と添加図1 天然歯・インプラント、および義歯に垂直負荷が作用した場合の顎骨のリモデリングのシミュレーション結果(青矢印:吸収、赤矢印:添加)。天然歯・インプラントでは添加と吸収がみられるのに対して、義歯床下では吸収のみがみられる(本図は参考文献4より引用)。文献から読み解くインプラントオーバーデンチャーへの疑問

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