QDT7月
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73Special対談「咬合接触点の理想と現実」 後編:臨床の中での咬合の考え方QDT Vol.37/2012 July page0893しい」ということでした。このような状態で来院された患者さんに、果たしてそのままセラミックの補綴物を製作していいのでしょうか? 歯科医師として、これだけ広範な咬耗を呈している口腔内にどのような補綴物を入れれば、長期に機能を維持する状態を回復できるのでしょう。私たちが考えなくてはならないのは白いセラミックスを装着することによる弊害、つまりセラミックスの破折やセラミックスを入れることによる対合歯の摩耗など、生体への侵襲を回避することです。そのためには現在の状況に至った原因を考察し、これ以上の口腔の破壊をいかに防止することができるかという一点につきます。 通常、このような広範な咬耗はブラキシズムに起因していると考えるのが一般的です。そして咬耗によりたいせつなガイダンス機能が失われているわけですから、どのような方法で臼歯離開咬合を与えるかということになるわけです。当然、臼歯離開が行われればセラミック冠でも問題ないではないかと思われるでしょうが、むやみに強いガイダンスを与えることはできません。榊原先生はこのようなときのディスクルージョンの与え方に何か基準というか、補綴物製作上の目安というのはあるのでしょうか?榊原:このような、ほとんどフル・バランスに近いケースでは、三点接触を与えたワクシングをしても咬合器を動かせばひとたまりもなく咬頭は壊れてしまいます。側方運動時に臼歯をディスクルージョンさせる一見簡単そうにみえる左右の第一大臼歯の補綴だが……afdebgch図1a~h 左右の下顎第一小臼歯の補綴を希望した患者。一見簡単そうにみえるが、右側の第二大臼歯・第二小臼歯、左側の第二大臼歯・第一小臼歯・犬歯の咬耗が進行している。歯冠色の補綴を希望されていたが、セラミックスではリスクが大きいと判断しメタルクラウンを選択した。
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