55QDT Vol.47/2022 August page 1051図1 すべてのケースにおいてラボサイドでのプロビジョナルレストレーション製作が必須とは言えないが、右のようなケースではプロビジョナルレストレーションを製作したい。・最終補綴装置のイメージがしにくい場合・基本的な指標が当てはまらず補綴装置の製作が難しい(「何となく」で製作しなくてはならない)場合・機能性・清掃性の指標がなく、口腔内にて経過を観察する必要のある場合・多数歯の補綴・修復治療を行う場合・バイトが不安定(変化する可能性がある)な場合(イン・インプラント補綴で理想的な形態の付与が難しい場合プラント補綴を含む)筆者の考える臼歯部においてラボサイドにてプロビジョナルレストレーションを製作する必要性が高い症例 臼歯部においても最終補綴装置に与えようとしている形態が患者の口腔内で機能性・審美性などさまざまな観点から適応するかを観察・修正・再評価し、そこから得られた情報(形態)を最終補綴装置に反映していくためのツールであることは前歯部と変わらない。 前歯部と異なるのは、審美性よりも機能性に重点を置いて考える必要があるということである。機能性は審美性とは異なり視覚的に判断しにくく、与えた形態が患者の口腔内でどのような反応を示すのかを実際に使用して観察する必要があり、そのためにプロビジョナルレストレーションが重要な役割を担っている。 しかし臨床においては、咬合再構成のような多数歯の症例ではラボサイドにてプロビジョナルレストレーションを製作する頻度が高いが、臼歯部の少数歯補綴ではラボサイドにてプロビジョナルレストレーションを製作する頻度は少なく感じる。理想的には、すべての症例においてラボサイドでプロビジョナルレストレーションを製作し、形態を確認してから最終補綴装置製作に移行したいところではあるが、患者の来院回数やチェアタイムが増え、また技工料金も発生するなどのデメリットが発生することも事実である。実際に筆者も、チェアサイドで製作されたプロビジョナルレストレーションにて最終補綴装置の形態の指標が得られれば問題ないと考え、そのまま最終補綴装置製作に移行している。ただし、そのためにはチェアサイドにて製作されたプロビジョナルレストレーションにおいても、単純に最終補綴装置装着までの間に支台歯上のスペースを埋めるものとしてではなく、プロビジョナルレストレーションとして必要な要件を有したものである必要がある。これはプロビジョナルレストレーションを製作する歯科医師の知識や技量によって変わってくると思われるので、歯科技工士としてはそのまま最終補綴装置を製作して問題がないのか、改めてプロビジョナルレストレーションを製作して確認を行ったほうが良いのかを判断するための知識を蓄えておく必要がある。その結果、必要があると判断したケース(図1)では、ラボサイドでプロビジョナルレストレーションを製作させていただくよう提案し、それを基に口腔内にて経過観察を行って調整していくことが必要になることもある(次ページのポイントを参照)。 また、臼歯のプロビジョナルレストレーションにおけるその他の使用目的としては、バイト採得時に部分的にプロビジョナルレストレーションを使用しながら採得することで、安定した状態でバイト採得を行うことが可能になるという点も挙げられる(次ページのポイントを参照)。臼歯部におけるプロビジョナルレストレーションの役割
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