ザ・クインテッセンス 2022年4月号
9/11

Tasuku Tsutsui, Shuji Mizuno, Tokuo Matsui, Takeshi Sasakiキーワード: 補綴治療,支台歯形成,印象採得,咬合採得Basic Principles of Accurate Prosthesis192筒井 佑*1/水野秀治*1,*2/松井徳雄*2/佐々木 猛*1,*2*1医療法人貴和会 新大阪歯科診療所連絡先:〒532‐0003 大阪府大阪市淀川区宮原3‐4‐30‐9F*2医療法人貴和会 銀座歯科診療所連絡先:〒104‐0061 東京都中央区銀座6‐9‐8‐7F 歯科治療の目的は機能と審美を回復することであり,われわれ歯科医師はその治療結果を長期にわたって維持していくために,臨床において日々努力をしている.しかし,実際の臨床においては約80%が再治療といわれており,われわれが行った治療結果が,必ずしも長持ちしているとはいえないのが現状である. そのような状況には,さまざまな原因が考えられるが,大きな原因の1つに,術者が歯周治療や補綴治療の基本を遵守していないことが挙げられる. たとえば,歯周組織に歯周炎の進行や生物学的幅径の侵襲による歯肉の炎症などの問題が残存していると,いくら適合精度の高い補綴治療を行っても,その予後は不確実で,さらなる歯周疾患の進行を招きかねない(図1a,b). 逆に,いくら歯周組織が健全であっても,適合や形態の不良な補綴装置を装着することにより,清掃性の低下を招き,歯肉の炎症や歯槽骨の吸収などの第1回 総論第2回 ①適切な支台歯形成第3回 ②口腔内に調和した第4回 ③精密な印象採得第5回 ④正確な咬合採得プロビジョナルレストレーションの製作歯周組織の破壊につながっていくのを臨床においてしばしば目にする(図2a,b). 補綴装置が長期的に維持・安定するためには,まずは清掃性および安定性の高い歯周環境を獲得することが大切である(図3). そこで,本連載では,とくに臨床経験が浅い歯科医師の先生が上記のような状況に陥らないための一助となるよう,精度を求めた治療のステップを中心に,補綴治療の基本的なルールについて解説する. 今回は,総論として,歯周治療と補綴治療について,確認しておくべき基本原則を説明する. 清掃性の高い歯周環境とは,浅い歯肉溝,十分な付着歯肉,生理的な骨形態を有し,生物学的幅径を維持していることが,その条件であると筆者らは考えている. また,①歯槽骨,②歯肉,③歯列に段差や不整形がなく連続性が保たれていることも,プラークの溜the Quintessence. Vol.41 No.4/2022—0926新連載お悩み解決QA&これだけはおさえておきたい!補綴治療の基本原則第1回 総論はじめに1.清掃性の高い歯周環境とは?

元のページ  ../index.html#9

このブックを見る