ザ・クインテッセンス 2023年11月号
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 根管充填は根管内の化学的・機械的拡大清掃が終了し,術前の臨床症状などがすべて消失した後,根尖性歯周炎の治療や予防を目的として行われ,根管内と根尖周囲組織との遮断が図られる.根管充填材料が具備すべき要件は提示されているものの,いまだそれらをすべて満たす材料はなく(図1)1,理想的な根管充填材料の開発が日々行われている. MTA(mineral trioxide agriggate)は,1990年代初頭にロマリンダ大学のTorabinejad教授ら2~4によって開発された,ポルトランドセメントを主成分とする歯科用セメントである(図2a〜c).MTAは従来の歯科用セメントに比べ生体親和性に優れ,良好な封鎖性や硬組織誘導能を示し,高PHによる持続的な抗菌作用を備えており,水和反応で硬化するため水分の存在下でも使用が可能である. MTAは逆根管充填材料や穿孔封鎖材料として開発されたものであるが,直接覆髄やアペキシフィケーションなどにも有効であることが示され,今や歯内療法においてなくてはならないものとなっており,根尖が大きく開いた症例の根管充填にも用いられている(図2d).しかしMTAは取り扱いが難しく,根管充填に用いる場合,緊密に過不足なく充填することは容易ではない. 本稿は,“MTAの根管充填の仕方”という狭いテーマであるが,MTAが根管充填材料として用いられるようになった背景を振り返り,そこから各根管形態に応じたMTA根管充填(MTA apical plug)のポイントなどを考察したいと思う. なおMTAは,本邦では覆髄材としてのみ認可を受けている.そのため根管充填に使用する場合は自由診療の下,患者の同意を得て行う必要があることをはじめに明記しておく.また充填にはマイクロスコープやルーペなどの拡大装置の使用が望ましい.Hidetaka Ishizakiキーワード:根管充填,MTA apical plug,MTAの除去石崎秀隆静岡県勤務 きうち歯科医院*/長崎大学大学院医歯薬学総合研究科歯周歯内治療学分野連絡先:*〒416‐0908 静岡県富士市柚木383‐6A New Option for the Root Canal Filling with MTA:Filling Techniques as a MTA Apical Plug and Several Root Canal Morphology & How to Remove the MTA76the Quintessence. Vol.42 No.11/2023—2452MTA apical plugなどのさまざまな根管形態への充填テクニック&MTAの除去方法はじめに特 集 3MTAを用いた根管充填の新たな選択肢これで解決!

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